Sidewind! > Shot-story > テークオーバ

 あれから五年が経つ。
 彼女が街へやってきたその次の日に、俺は他所へ引っ越した。
 ときどきあの出来事が、俺の勝手な妄想だったのではないかと思う。その度に、彼女のペンダントが、現実だったのだと教えてくれる。大事な、記録だ。それは今も俺の首にかかっている。
 合宿からの帰り道。電車が、知った駅に止まる。
「俺、ちょっと用事思い出したからここで降りるよ」
 一緒に乗っていた友人にそう言い残し、俺は電車を降りた。
 駅前の通りは、大きな変化は無いように見える。
 そこから学校に向かって久しぶりに顔を出し、それから川沿いの道を歩いて帰った。当然着くのは、昔の家だ。
 そして隣には、彼女の家がある。
 まだ居るかどうかは、わからないけれど。
 門の前に立ち、インターホンを押す。
 カメラのレンズに、自分の姿が反射している。
「ねぇ、憶えてる――」