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 結局、学校に着くまで腕は組みっぱなしだった。
 閉ざされた校門の前に立ち、暗い校舎を眺める。
「それで、どこからはいるの?」
 校舎内へは教室の窓からはいるとして、まず外壁を抜ける必要があった。校門には赤外線センサがついているので、柵を越えると同時に警備員に囲われる。
「グラウンドの方から入ろう。運動部の作った抜け道があるから」
「……詳しいんだね」
「そりゃ、何度も潜入してますから」
 学校のフェンス沿いに歩き、隣接するマンションの壁との間にできた隙間に身体を滑り込ませる。そうする時も、彼女は手を離そうとしなかった。
「入れそう?」
「なんか服が汚れそうでやだなあ」
「じゃあ、止めておこうか。無理してまですることでもないし」
「いや、少し汚れるくらい構わないんだけどね。もともと引っ越しの作業で、汚れる覚悟の服だったし」
「そう。ならいいんだけど」
 そこから十数メートル奥へ進むと、フェンスに穴が開いている箇所がある。野球部のバックネットに隠れる位置で、普通は気がつかれない。
「ここから入るんだけど。怪我しないように気を付けて」
「思ってたより険しいなあ」
「あくまで非常用だからね。あと、ここは一応運動部専用だから、文化部とか帰宅部はほかの通路を使うことになってる」
「はい、気を付けます」
 グランドは中央を横切って、校舎へと向かった。グラウンドの端を通る方が見つからなさそうに思えるけれど、フェンス沿いにセンサが複数設置されているのでかえって見つかりやすいのは調査済みだ。
 その点、中央突破なら警備員に見つからない限り気づかれない。学校への侵入で、夜陰に乗じての中央突破を基本とされるのは、この辺が理由なんだけれど。