+day(6)
 やっと街に着いた。久しぶりに帰ってきた感じ。
「あと2日……エレン、あいつの家の場所ってわかる?」
 もう仕事は終わった(正確には無くなった)のだから、もう一緒に居る必要はない。
「いえ……私は、施設で暮らしていたので」
「施設?」
「寮みたいなモノです」
「なるほどね。『施設』って事は他にも何人かいるの?」
「はい。全員で……15名ほどです」
「もしかして、全員銃を普通に使えたり?」
「そうですね。人並みには訓練されていると思います」
 さ、殺人集団かよ。
「……じゃ、その施設の場所は?」
「残念ながらわかりません」
……そうか。
「ウチに泊まってく……しか無いね」
「あの、迷惑でしょうか?」
「いや、大丈夫。ウチで良ければ、いつでも使って」
 ハハハ、と明るく笑ってみせると、エレンも笑った。
「それじゃ、お願いします」
「OK、じゃ晩ご飯は何にしようか」
 そうして、家へと車を走らせる。


 それからの二日間は何事もなく、平穏に過ぎていった。
 会社(と言っても暇な殺し屋の集まりで、一応広告を作ってたりする)から帰るとエレンが洗濯をしていて、なんというか意外だった。
 本人によると、施設では自分のことは自分でやらなくてはいけないので、自然に身に付いたのだそうだ。けれど料理だけは業者の担当なので出来ないらしい。
――午後5時、エレンと一緒に家を出る。


 5時23分、店内には、すでにあの男がいた。
 あの男の向かいに腰掛ける。エレンは横に立ったまま。
「それで、どうだったのかね」
 男は沈むように椅子に座っている。
「そうですね、この住所に人は住んでいませんでした」
 男の顔が、少し歪んだ。
「つまり……殺せてない、と?」
「はい。恐らく全て偽造されたモノだったのでしょう」
 嘘も方便……じゃないか。
「……そうか、わかった。手間を取らせたな」
「いえ」
 男は立ち上がると、エレンを連れて店を出て行った。


 空白。
 たった三日間だけの生活から元の生活に戻ると、予想していた空白が存在していた。
 今更になって後悔するのは、あの時エレンに名前を付けた事だ。名前を付けなければここまで彼女の存在が大きく成ることも無かっただろう。
 最後に挨拶が出来なかったのが心残りだ。
――なんだか、急に疲れた。