Trash Basket Notebook
--page18:機動歩兵 ~Steel girls.

 カバンからパワードスーツを取り出す。
 アスファルトの上に座り、四肢に装甲とアクチュエータから構成されるユニットを固定した。次にそれらを背中に背負ったコアとケーブルで接続する。自動的に動作チェックが始まった。問題なし。
 最後にゴーグルとインカムをつける。ゴーグルの電源はコアと連動していて、もう入っていた。レンズの内側にバッテリーの残容量や、味方のレーダのデータが映し出される。
「卯月、聞こえているか?」
 イヤホンからオペレータの声が聞こえてきた。
「聞こえてます」
 訓練用のガスガンにガスを充填しながら答える。
「よし。俺がいる場所はわかるか」
 ドーム状の施設の中を見回すと、少し上の方に報道席のような場所が見つかった。
「そこですか?」
「見えているな。正面を見ろ」
 言われるまま、視線を前に向ける。
 私は道路の真ん中に突っ立っていた。ビルになり損ねたような建物が並んでいる。軍特殊部隊の訓練用に作られた町、ということだが、なかなか殺風景だ。
「町の中にターゲットが五つ設置されている。卯月と神流で先に多くのターゲットを破壊した方が勝ちだ。ターゲットの場所はレーダに表示される」
「こちら神流、了解した」
「卯月、了解です」
「よし。スタート」
 オペレータの声と共に、レーダに五つの赤い点が表示された。その最も近い一点へ向けて駆ける。
「あのビルの中か……」
 レーダの点と重なる場所にはビルが建てられていた。十分近づくと、レーダが2D表示から3D表示に切り替わる。ターゲットは4階か5階のフロアに在るらしい事が分かり、もう一つの赤点がほぼ同じ高さにある。隣のビルか。
 扉の付いていない入り口からビルに入り、四階まで駆け上がってフロアを覗く。が、ターゲットは見当たらない。
 五階のフロアにはいると、中央から少し外れたところにターゲットらしい風船が浮いていた。それをガスガンで打ち抜き、レーダを確認する。すでに残っているターゲットは二つになっていた。
「最近のターゲットは隣のビルか」
 窓際に駆け寄り外をみる。距離は二メートル程。いける、と踏んだ。
 一度壁から離れ助走をつけて跳び、隣のビルのフロアに滑り込む。
「ビンゴ」
 ちょうど正面にターゲットが浮いていた。左腕パーツに内蔵されたブレードでそれを割る。レーダを確認すると、最後のターゲットは少し離れていた。
「聞け、卯月」
「なんですか」
「神流がラストターゲットのあるビルに突入した」
「え、ホントですか?」
「ターゲットの位置を考えて行動しろ。間に合うぞ」
「っていうか、私ばかりに肩入れするのは」
「俺はこのテストの監督員だが、同時にお前のオペレータだ。神流には彼女のオペレータがいる。そんなことを気にするな」
「Yes, sir.」
 位置を考えて、か。
 レーダを手動で3D表示に切り替える。
 距離八十、高度差はプラス6程。ここよりも高い、か。
 私はさらに階段を登る。

 重い鉄の扉を押し開けると、予想通り屋上に出た。
 そしてまさに、そこからターゲットが見えた。
 ガスガンを構え、長距離射撃のファームウェアを立ち上げる。
 ゴーグルの内側にキューティクルが投影された。光学ズームを併用し、十字をターゲットに重ねる。そして慎重に、引き金を引く。
 弾丸は吸い込まれるように、ターゲットへ。
 オペレータの助言があったにしろ、これで神流に初勝利だ。
 じんわりと、心の中に達成感がひろがる。

「まだだ、卯月」
 そのオペレータの声で、現実に引き戻された。ターゲットのある屋上へ目をやる。
 そこには、屋上へ出てきた神流の姿があった。
「どうして」
「神流が、君の球を撃ち抜いた」
「そんなあ」
 遠くでターゲットの弾ける音がした。
「卯月、おしかったわね」
「神流?」
「次が楽しみだわ。それじゃ」


たなです。
何も考えずに書くと、やっぱり中身がないですな。これこそTrash basket notebookにふさわしい感じ。

いまパワードスーツ装備したメカ娘の話を書いていて、そちらの方がすこし詰まってしまったので息抜きに書いてみました、みたいな感じ。当然、キャラもすでにできあがっています。

なにか面白みに欠ける後書き(?)ですが。まあいつも特に面白いわけでもないから良いですよね。許して?

(c) 2008 たな.