Trash Basket Notebook
--page04:悪魔

北欧風の建物が並ぶ、通称「レンガ坂」をのぼる。
目的は頂上付近にある文具店だ。
品揃えが良く、商品もほとんどが他店より5〜20%程やすい。
問題は、立地条件だ。
見晴らしはいいかも知れないが、駅やバス停からも遠く、山の上なので自転車でも行きづらい。
ただ、学校が駅と店のちょうど中間にあるため、帰りに寄る生徒は多い。そして俺もその内の一人、と。
そんなことを考えながら歩いていると、正面から白い顎髭を蓄え、高そうなスーツを着た老人が降りてきた。
どこかの召使いか、「爺や」とか呼ばれていそうだ。
不自然なほどに姿勢が良く、空は雲ひとつ無い晴天なのに柄がまっすぐな黒い傘を持っている。
そのまますれ違う。その瞬間。
老人は傘の柄を強く握り、そのまま引き抜くと銀の刃身を光らせた。
――仕込み刀!?
とっさに老人から離れ、上着の内ポケットから拳銃を抜き、老人に向かって2発、発射する。
2発とも外れた。
――正確には、避けられた。 銃弾は確かに老人のいた場所を貫いていった。しかし、人間に、ましてや老人にこんな動きができるわけ無い。
……となると、可能性としては「悪魔」か。
1998年後半から世界各地で発見報告が相次ぐ「悪魔」
その容姿はさまざまで、共通するのは「ただ、狂ったように人を殺し続ける」という事だけ。
通常の霊体と比べ物にならないほど強い、別格である。
くそ、やっかいなヤツに会ってしまった。
この国で最初の報告はつい三日前、約200km離れた山間の村でだ。
その村は、もう無い。
本当にやっかいなヤツに出会ってしまった。こうなると自分の運の悪さを徹底的に呪うしかない。
その老人は、というとさっきまでいた場所に残像を残して、今は俺のすぐ横……
ズカッッという低い音と、体の中に響く衝撃。
蹴られた。
分かるのは、ただそれだけだ。
手から唯一の対抗手段である、退魔仕様の拳銃が飛び出す。
あーあ。このまえ修理したばっかりなのに、また壊れちまう。結構高いのに、修理費。
そんなことより、今はこの状況から脱出する方法を考えねば――

はい、これはDiaryで9/28に公開した作品に少し手を加えた物です。サルベージシリーズ第一弾。
えーっと、最後の一文が書き加えてあり、原版と比べてまとまった終わり方をしていると思うのですがどうでしょう?
対魔仕様の拳銃とか、霊体とか、その辺の設定は製作中のゲームに受け継がれてます。
(c) 2006 tanaka.